その“スーッ”とする感覚、本当に冷えているわけではありません。
― 丸の内で働く人に知ってほしい、歯磨き剤と脳の不思議な関係 ―

その爽快感、脳が感じています

丸の内で働いていると、朝の歯磨きや昼休みの歯磨きが一種のリフレッシュタイムになっている方も多いのではないでしょうか。

歯磨きを終えた後の「スーッとした爽快感」。

私たちは当たり前のように感じていますが、実はあの感覚は本当に口の中が冷えているわけではありません。

歯磨き剤に含まれるメントールという成分が、私たちの脳に「冷たい」と錯覚させているのです。

脳はだまされる

メントールはミントに含まれる天然成分です。

口の中に入ると、神経に存在する「冷たさを感じるセンサー」を刺激します。

すると脳は、

「冷たい空気が入ってきた」
「口の中がすっきりした」

と認識します。

しかし実際には温度はほとんど変わっていません。

つまり、私たちは毎日、歯磨き剤による心地よい“錯覚”を体験しているのです。

なぜ爽快感が大切なのか

歯科医療の本質はもちろん、むし歯や歯周病を予防することです。

しかし人間は理屈だけでは行動できません。

「気持ちがいい」
「すっきりする」
「また使いたい」

という感覚も、セルフケアを継続する重要な要素です。

忙しいビジネスパーソンほど、その傾向は強いかもしれません。

朝の会議前。
昼食後。
帰宅前。

歯磨きによって気分が切り替わる経験は、多くの方が持っているでしょう。

ノーベル賞と歯磨き剤の意外な関係

実はメントールには、日本人研究者によるノーベル賞級の研究成果が関わっています。

現在、世界中で使用されている高品質なメントールの大量生産技術は、野依良治博士が開発した不斉合成技術によって大きく進歩しました。

2001年にノーベル化学賞を受賞したこの研究は、医薬品開発だけでなく、私たちが日常的に使う歯磨き剤やガム、洗口液にも活用されています。

毎朝の歯磨きの中にも、最先端の科学技術が息づいているのです。

爽快感よりも大切なこと

もちろん、歯磨き剤を選ぶ際に最も重要なのは爽快感ではありません。

むし歯予防という観点ではフッ化物(フッ素)の配合量が重要です。

また歯周病予防においては、

  • 毎日の丁寧なブラッシング
  • 歯間清掃
  • 定期的なメインテナンス

が欠かせません。

どれほど爽快感のある歯磨き剤でも、磨き残しをなくしてくれるわけではないからです。

丸の内で働く皆さまへ

東京駅直結の新丸ビル10階歯科には、丸の内・大手町・有楽町エリアで働く多くの方が来院されています。

仕事に集中するためには、身体のコンディションだけでなく、お口の健康も重要です。

毎日の歯磨きで感じる「スーッ」という感覚。

その背景には、人間の脳の仕組みと最先端の科学技術が隠れています。

次回歯磨きをするときは、そんなことを少し思い出してみてください。

参考文献

  • 野依良治, Nobel Prize in Chemistry 2001
  • TRPM8 に関する神経科学研究
  • American Dental Association フッ化物配合歯磨剤ガイドライン
  • 日本口腔衛生学会 フッ化物応用に関する提言